2010年
養生訓から 2010年12月15日

 本コラムは今年最後の配信となりました。1年間のご愛読を感謝申し上げます。

 1712年に医者で儒学者の貝原益軒が著した『養生訓』は、300年経った今でも読み継がれている超ロングセラーの養生指南書です。現代に通じるたくさんの教えがあり驚きます。

 平常心を保ち、気持ちをむやみに波立たせないことが健康の秘訣と説いています。養生の基本は「気を養う」「気を保つ」「気をめぐらす」ことをよしとして、「気をふさぐ」「気を滞らせる」「気をへらす」ことはいけないと繰り返して述べています。とても難しいことですが『意識化』したいと思います。

 あわただしい毎日かと思いますが、どうぞ、よい年末年始をお過ごしください。今年以上に来年も進化し続けたいと思っております。ご支援ください。
 

職員の研修履歴 2010年12月1日

 研修担当の皆さんは、自分自身を含めて、各々の職員にどれだけの投資をしているか把握していますか。もちろんここでの投資は『人材育成のため』、を意味します。研修の中で申し上げるのですが、社会人になってから定年を迎えるまで、人材育成の名の下に研修体系が整備されている企業など微々たるものです。それに比べたら自治体職員はとても恵まれた環境にあると思います。ところが、これだけ電子化が進んでいるのに研修履歴が把握されていないため、当の本人すら「何を学んできたのか」忘れている現実があるようです。仮に履歴が把握されていたにしても、そのデータが「うまく活用されていない」、そんな気がしてなりません。

 『研修履歴からみた職員の成長度合いの考察』。こんな研究論文に取り組んでみたら面白いと思うのですが。

 情報誌『ランタナ5号』を送付中です。既購読の皆様で未着の方、あるいは新規購読をご希望の方はお知らせください。無料でお届けいたします。


研修計画のアンバランス 2010年11月15日

Q:例年のことですが、年度の前半に研修が集中してしまいます。その結果、12月〜3月は研修がゼロに近い状態になります。負荷が集中することで、4月から11月までは余裕を失いながらの日々を送っています。よい方法をアドバイスください。

A:研修担当の皆さんは、研修を企画するだけが仕事ではありません。研修を聴講しながら自己啓発に励むことも大切です。研修が集中して事務処理ばかりに追われるのでしたら残念です。せっかく研修担当になれたのですから、貪欲に勉強のチャンスととらえましょう。集中する事情はある程度理解していますが、前例踏襲に縛られている、それが大きな原因だと思います。@単純に1年をA〜C程度のブロックに分けてみましょう。Aポストイットカードに研修名を書いてください。B適当に各ブロックに研修名を書いたポストイットカードを張り付けてみましょう。C何度か入れ替えを繰り返してください。Dそのようにしているうちに、きっとバランスがとれてくると思います。

 時期にこだわらないで実施可能な研修が必ずあるはずです。試してみてください。
  

いつか必ず 2010年11月1日

  サラリーマンからこの仕事に転職・独立しました。一見、華やかな職業に見られがちですが、仕事の挫折感・焦燥感にさいなまれることも、しばしばあります。それでも、ここまで何とか踏ん張ることが出来たのは、心のどこかで『人様のお役に立ちたい』、そして、『限界まで進化したい』、そんな思いがあったからだと思うのです。

 既に研修担当を離れた方と、久しぶりにお会いする機会があります。頼もしくなられた様子に、我が子を見るような嬉しさを感じます。比較的、長いお取引をさせていただく私は、当然、現任の研修担当の方とのお付き合いも長くなります。1年に1〜2回でも、お伺いする度に、成長の足跡を感じます。自分の力量など微力なはずなのに、勝手に自慢したくなります。

 いま、必死で人材育成を担っている皆さんにも、いつか必ず、このような嬉しい日が訪れることを信じています。『自分のためにせずして人のためにならない』。亡き恩師からいただいた言葉です。お互いに頑張りましょう。


23年度の研修計画に向けて 2010年10月15日
 
 気が付けば、今年度も半年が経過しました。ありがたい事に、既に4月以降の仮予約も入り始めました。今の私の人材育成のスタンスは、

         伸ばそう4つの力


                  書く力
           
                 話す力
           
                 考える力

                 傾聴力
                                   です。
 
 

問われるニーズ把握 2010年10月1日

 研修参加者へのアンケートで「今後、どのような研修を受けたいですか」、といった設問を見かけます。この方法も『ニーズ把握』の一つですが、私の視点は少々違っています。研修でのニーズ把握は、「まず、組織のビジョンを優先すべき」、と思っています。組織の要(かなめ)となる人材を活用して、『どのような組織力を発揮するか』、これが組織のビジョンです。この目標を明確にしない限り、そして、組織にそれを浸透させない限り、研修はいつも一人歩きしてお荷物扱いされるような気がしてなりません。研修担当の皆さんはもとより、首長を中心とした経営トップ(幹部職員)の方々に、人材を活用した『組織力づくりのビジョン』の本気度が問われています。

 ビジョンに対して、職員の現状を照らし合わせ、その『差異(不足)力』を見極める。これが『ニーズ把握』です。つまり、研修のニーズ把握は、研修担当の皆さんが行うのが当然ですが、前提は首長を中心とした経営トップ(幹部職員)に委ねられるのです。経営トップとの議論を活性化させてください。
 

総括 2010年9月15日

Q:研修担当として、精一杯頑張ってきた、頑張っているつもりですが、何かが欠けているような気がしてなりません。来年は異動の予感もします。抽象的な質問で恐縮ですが、アドバイスをお願いいたします。

A:一方的なコメントとなりますが、ご了解ください。『総括』という言葉があります。政治活動や組合運動などで、以後の運動のため、それまで行ってきた方針や成果を自ら評価・検討するときなどに、このような言葉が使われる場合があります。(当然、他の意味でもこの言葉は使われます)今後の運動(人材育成)のために、あなた自身、この機会にしっかりとこれまでの歩みを『総括』してはいかがでしょう。私の勝手な推測ですが、自治体の研修担当の皆さんには、とりわけこの『総括』が不足しているような気がします。前任者から引き継いだ研修、自分で新規に企画した研修、あるいは廃止した研修、さらには、受講者の反応や講師の選定など、多岐に亘って主観を交えず真摯に記録してみる。何が良くて、何がダメだったのかを伝え残す義務があるのでは、と私は思います。
 

人材育成の壁 2010年9月1日

 「人材育成」の重要性がかなり浸透してきていると思います。それでも「組織をあげた取り組みまでにはなかなか至っていない」、そんな気がしませんか?厚い壁に阻まれて地団駄を踏んでいる研修スタッフの叫びが聞こえてくる。そんな気がするときもあります。

 そのような中、小さな町(人口1万強、職員数150名弱)ですが、毎年(長年続いているそうです)、役所の幹部が勉強会に臨んでいます。私はその研修を昨年依頼され今年で2回目です。町長、副町長、教育長、課長級、主幹、保育園長、給食センター所長など18名の幹部の皆さんが今年参加されます。うち、13名は昨年も私の研修に参加してくださった方々です。熱心な取り組みに頭が下がります。

 まだ暑さが続きそうですが、研修事業も折り返し点に差し掛かります。壁を打ち破る半年でありたいと念じております。


追いつけない研修現場 2010年8月15日

Q:不祥事が発生すると「不祥事防止研修」を、心の病の職員が多くなると「メンタルヘルスの研修」を、人事評価や目標による管理が遅れているから早急にシステム化を検討せよ・・・。研修&研修事務に追われる毎日です。自分は何をしなければならないのか?迷いの毎日で、先手の研修が打てないもどかしさに悩んでいます。

A:私も同様な思いにさいなまれることがあります。かくしん(核心と確信、そして革新)が持てないことが大きな理由と思っています。思うように作業が進まずにイライラすることがあります。辛いですよね。仕事が後手になるのは、組織が硬直化していることが考えられます。@退職者の増加で、管理監督者の世代交代が始まった。A結果、組織のマネジメント力が低下している。B採用の手控えに限界があり、採用枠を増やしているが、なかなか戦力にならない。C人件費削減のため、嘱託職員が増えている。D結果、その両者間の相互信頼やコミュニケーションに障害が発生する。

 結論として、早急な「管理監督者級」の人材育成強化が必要と考えます。9月1日発刊の情報誌『ランタナ』に関連記事を掲載します。ご覧ください。
 

無駄な抵抗!? 2010年8月1日

 猛烈な暑さで研修現場も本当に大変です。相変わらず私、橋は“あの手この手”と、講座・講演の運営に懸命なのですが・・・

 考えるところがあって、最近、某大学で勉強しています。立場をかえると、かなり受講生も大変です。あらためて、指導のあり様を考えさせられます。その授業の中で、不可思議なことを経験(感じて)しています。ほとんどの教授が「テキストに書いてあるようなことと同じ話をしてもあまり意味がありませんから・・・」、と言って別の話をします。もう一つ「眠い人はどうぞ寝て居ても構いません・・・」、と言うのです。

 私などは、特に、寝ている受講生には手厳しく、「テキスト作成に、なぜこれほど時間を割くの!?」、と自問自答しながらも、けな気に頑張っているつもりです。これって無駄な抵抗?何でしょうか。単純で素朴で深刻な悩みです。研修ご担当の皆さん!今月は逆に、私にアドバイスをお願いいたします。


研修を見直しては見たものの・・・ 2010年7月15日

Q:今は私が研修部門の直接担当責任者です。前任者の時代に大幅な見直しをしました。トップからの指示もあり、研修内容・研修時間・階層別と公募研修のバランス・研修講師など、多岐に亘っての見直しでした。見直した結果は、一長一短ありましたが、どちらかと言えばプラスの効果は期待できませんでした。研修講師の皆さんには大変失礼な言い方ですが、特に講師は“当たりはずれ”がありました。以前にお願いしておりました講師に再度依頼をしたいと思っているのですが、義理を欠いてしまった手前、なかなか決断の勇気がありません。アドバイスをお願いいたします。

A:自治体の場合は、例え『改悪だった』と答えが出ても、それすらもまた前例踏襲しなければならない悪しき習慣があるようですね。現在、直接担当責任者でも勝手な行動は慎み、まずは上司や前任者へ根回しをしましょう。その上で、『上司と私の総意です』、と講師には丁重に再登壇をお願いしてみてはいかがでしょう。“義理を欠いたら、義理を通す”、それが人間関係の礎です。
 

三つ目のアンケート 2010年7月1日

 研修が終わると、参加者には受講アンケートが、講師にはときによって「講師用アンケート」が義務づけられています。私は、担当させていただきましたお客様には、以前から、研修所感は必ずお届けするようにしていました。ですから、そのことを負担と感じたことはありません。この二つのアンケートの意義はありますから、設問方式などを工夫しながら、効果測定の参考にするとよいでしょう。但し、体裁的(マンネリ)なアンケートにならないようにすることが研修担当の務めだと考えます。

 気になるのは、「研修担当者自身」が、参加した職員の「レベル(自治体間や職員間格差)」や「意欲」、「学習スピード」「理解力」「自己変革力」などをどのように把握しているかという点です。これらの視点に立った『担当者自らの三つ目のアンケート』が不可欠ではないでしょうか。研修担当者の皆さんの声が「私にはあまり聞こえてこない」のです。担当者はもっと『真摯に声を』あげましょう。『地方分権の名の下に』、“お山の大将のような職員が増えつつある”ことを危惧します。自分の目と耳と皮膚で感じたことを、もっと首長に進言しましょう!


気が抜けて・・・ 2010年6月15日

Q:4月は新人研修、5月は新任係長研修や課長研修に追われ、気がついてみたらもう6月も半ば。何だか気が抜けたようなこの頃です。先生もそんな時があるのでしょうか?失礼な質問とお叱りを受けそうですが・・・

A:神様がくださった『休暇』と思って、のんびりしたらいかがですか!歳をとったら、休暇が欲しくなくても毎日が休暇・・・そんな日はすぐに訪れますよ。私は、5日から12日まで連休をとりました。待望の温泉には行けませんでしたが、素敵な皆さんと食事をしたり、好きなガーデニングを楽しんだり、ハッピーな時の流れに身を任せて心を癒しました。かなり、胃袋と肝臓にはアルコールの摂取量が多く負担をかけましたが・・・。心からの親友が、自らのブログで(かなり評判の高いブログです)、私(橋)の元気な源を紹介してくださったり・・・良き仲間が橋を励ます会に膝の痛みを堪えてかけつけてくださったり・・・。
『現場主義を貫く』醍醐味を心から味わい感謝する一週間でした。

 九州某市から、当時、係長だったMさんが古巣の課長に栄転で戻ったとのニュースも入りました。どの仕事も価値がありますが、研修の醍醐味を経験しないで異動する・・・のでしたら淋し過ぎますよ!今月は命の洗濯をしましょう!それを『レクレーション』といいます。
 

虚しい気持ちにならなかったら、それは偽り! 2010年6月1日

 弊社のお客様の(研修担当の)皆さんは、本当に人材育成に熱心な方ばかりです。ですから、私たちもその思いに応えなければ、と頑張っています。それでも、真面目に取り組めば、取り組むほど、ときどき虚しさにも襲われます。自分の無力さや驕りにも気がつきます。どうしようもない組織の壁の前で悔し涙を流している方もいます。私たちにとっては、わずか1日か2日、ときには2時間の研修です。それでも、「ご担当者の皆さんと喜怒哀楽を共有できなかったら、教壇には立つべきではない」、と強く自分自身に言い聞かせる昨今です。

 首長も自分の首がかわいいから、職員には強いことを言わない、言えない。それでも、私たちの素晴らしい同士は、「なんとかしなければ・・・」ともがいています。そんな思いを全く感じない研修担当者がいたとしたら、「それは自分自身への偽りの日々」、と悟るべきではないでしょうか・・・

 なんとか、本日の配信に間に合いました。これで本日2本目の配信です。あと1本残っています。さすがにキツイ・・・でも、まだ時間は1時間あります。


先生はどちらですか? 2010年5月15日

Q:4月配信の座談会(2回)の記事を見ました。「とても面白いメンバー!?」ですね。私も仲間に入りたくなりました。「意味深ではありませんでした」。私も『煙ったがられている研修担当』のひとり、だからでしょう。ところで、橋先生は、『煙ったがられている先生』なのでしょうか?そうだとしたら、失礼ですが、具体的にどんな点が、その対象なのかを教えてください。

A:返答に、少し躊躇の間がありました。どちらかと言えば、『煙ったがられている』割合は少ないと思います。なぜなら、この表現はお叱りを受けると思いますが、覚悟して申しましょう・・・「ご担当者やその上司が賢人でしたら、『煙ったい』とは思わない」それが経験としての理由です。優しそうな顔をして、結構、辛らつなことを言いますから、それが気に入らない人だけが『煙ったい』と思うのではないでしょうか。(勝手な推測です)あえて具体的な対象は何か・・・その答えを要求しているわけですよね。一例を挙げましょう。私は「見掛け倒し」や「怠け者」には、特にはっきりものを言います。例えば、結構、話題になっている(プラスの面で)会社や自治体があったとします。そんな研修先は、期待して臨みますが、『プライドだけお高く、レベルは中程度』の「見掛け倒し」。そんなときは、はっきりと、そのことを伝えます。(橋も「見掛け倒し」と思われたら洒落にもなりませんが)表面的には真摯な顔をして受けとめています。でも、言われたことに、内心では歯ぎしりして悔しがっているのではないでしょうか!思い出しました。某社や某市などがそんな感じでした。(実名で・・・などという再質問は勘弁してください)こんな回答をするから『煙ったがられる』のかも知れません。


意識改革 2010年5月1日

 新人研修、お疲れ様でした。研修担当の皆さん、どうぞこの連休で心身を癒してください。私もそうありたいのですが、この連休が正念場です。4月の処理仕切れなかった仕事や連休明けからの研修の準備に追われます。大変ですが、ありがたい連休です。

 連休が明けますと、新任係長や課長研修が目白押しです。既に4月も管理監督者級の皆さんの研修を担当させていただきました。各自治体の首長さんは、新規採用職員に対して「財政危機の現状」を訴え、作業の効率化を呼びかけていました。研修担当の皆さんも、首長の意図する路線で人材育成計画を立て研修に取り組まれることと思います。この1年間、首長の代行として職員の皆さんの「意識改革」の現状を、しっかりと把握してください。どんな研修を打っても、職員の意識が変わらなければ、結局は無駄な投資になります。最近、私は自分の意思をはっきりとお伝えすることにしています。「お引き受けした研修は最善を尽くします。しかし、申し上げたことを実践するか否かは皆さん次第、そこまでは責任を持てません」と。この連休、お気の毒ですが『一時帰休』する会社が今年もあるようです。『一時帰休』の意味が分からない・・・そのような管理監督者に出会わないことを5月の管理監督者研修では祈っています。


人材育成は本質の理解からU 2010年4月15日

 楽しく軽いノリの座談会“人材育成談義”を引き続きお聞きください。4月1日配信の最後の場面からです。

私:「『煙たい存在か・・・』、ところで、きょうのテーマは『本質の理解』だったよね。少し、話が飛躍し過ぎていないかな?」
A:「先生、『飛躍ではなくこれが本質なんですよ』!!」
私:「つまり、人材育成の本質を理解している人は、意外と『煙ったがられる!?』ということ!!」
A:「頭で分かっていても、相手にとっては痛いところを突かれるから、結局そんな関係(煙ったがられる風土)になってしまう。“本人も上司も面倒なことには関わりたくない”、それが本音ですよ。先生はそのように感じたことはありませんか?」
私:「おいおい、Aさんに言わせると『橋も煙ったがられる存在』ということなの!?
B:「先生、Aさんはそう言いたいんですよ。『自分と先生はよく似ているって』!」
A:「Bさん、それでは先生に失礼過ぎますよ・・・・・でも似ている!?」
C:「似ている面もあるけれど、Aさんのほうが『煙ったがられ度では格上』だな!」
A:「ど、どういうこと??」
C:「まだまだ、『江夏になれる』ってことだよ!」
私:「Cさん、それでは私の立場はどうなるの・・・・・、『江夏も無理?』・・・・・」
C:「うーん・・・先生は『煙ったがられる』ことを卒業したときが一番こわいからね。うまく言えないなぁ・・・代弁がうまいBさん助けてよ!」

 新年度早々、『意味深』な談義にお付き合いいただきありがとうございました。わけの分からない会話をしているようですが、この4人、結構『分かって会話をしている』。おもしろい人間関係です。
 

人材育成は本質の理解から 2010年4月1日

 研修担当を離れた皆さんと、今でも交流があります。「腹を割って話ができる」、そんな素晴らしい仲間です。官民が一緒になって“人材育成談義”に花を咲かせる。結構、楽しく軽いノリの座談会です。

A:「よく切れるけれど扱いが難しい刃物と、そこそこに切れて簡単に扱える刃物。切り口が綺麗に越したことはないけれど、切れないわけじゃないから後者でいいや・・・そんな人、最近多くなったと思わない?」
B:「さすがAさん!例えが上手いね。仕事の質ではなく、従順で扱いやすいかどうかが上司から見た部下評価のポイント、ということ?」
A:「その通り」。
C:「つまり、組織にとって『煙ったい存在はいらない』という意味なの?」
A:「組織には必要なのかもしれないけれど、常に必要なわけではないんだよね!どちらかといえば、困った時に必要なだけ。一匹狼的で絶対的なリリーフエース、かつて優勝請負人といわれた江夏投手に似ている存在感かな・・・」
B:「きょうはAさんの例えが冴えているなぁ。打たれれば本人の力量不足、抑えれば使った監督のお手柄。都合のいい時だけ、その煙たさを我慢していいように使い、それ以外はできるだけ関わらない。こういうことだねAさんが言いたいのは。」
A:「そうそう、さすが代弁力抜群のBさん!」
私:「『煙たい存在か・・・』、ところで、きょうのテーマは『本質の理解』だったよね。少し、話が飛躍し過ぎていないかな?」
A:「先生、『飛躍ではなくこれが本質なんですよ』!!」

 談義はまだまだ続きそうです。僭越ですが『傾聴力』がないと、この座談会は意味不明かも知れません。(この続きは15日の配信で)


研修担当を離れるとき 2010年3月15日

Q:この時期になると人事異動の臭いが・・・してきます。過去の例をみても、(自治体の場合は)研修担当から離れたら、二度と研修担当に戻ることはないような気がします。民間も同じなのでしょうか?「自分は本気で人材育成に取り組んできたのだろうか」という後悔の思いにも駆られます。

A:民間の場合、自治体のようなサイクルでの異動は、殆んどありません。自分が異動を希望すれば別でしょうが、その道を究めたいと思ったら「講師としての生き方」も可能です。でも、そのような生き方の相談を受けたとき、私は100%「止めなさい」と助言をします。民間の話はともかく、あなたが「後悔の思いに駆られる」のは、真面目に取り組んできた証のような気もします。反面、厳しい言い方ですが、「それなりの事しか、やってこなかった」のではないでしょうか。あなたなりの答えが出るのは、10年後でしょうね。その時に、今の思いが失せていないことを祈っております。
 

自分というモノサシ 2010年3月1日

 中堅クラスですが、人材育成(研修)にとても熱心な会社がありました。その会社で知り合ったAさんとの付き合いは、かれこれ15年ほどになります。当時、20代半ばだった青年は、先月の誕生日で四十路を過ぎました。「彼は将来必ずこの会社の幹部になる!」初めて会った時、私はそう確信しました。とてもワンマンでしたが気骨のある社長に、彼は当然ですが私も惚れ込みました。その社長の退任に伴い、新社長には創業家からの就任が決まりました。それから1年後、私はその会社からの研修依頼を断りました。1部上場企業の『課長の平均年齢』は、34歳前後です。彼の今のポストは『係長』。出世が人生のすべて、という考えは私には毛頭ありません(出世を考えるなら二度の転職はしませんでした)が、“人をみる目”の無さに腹が立ちます。

 先日、久しぶりに車窓からその会社を見ました。心底、「(会社を)見るのも嫌!!」、そんな思いがしました。私だけかも知れませんが、人間は勝手なものだと思いました。自分にとって都合のいい時(人)は、本当にいい人。自分にとって都合の悪い時(人)は、実に嫌な人になるのですから・・・。

 私自身はこれまでかなり『頑固さ』を貫いてきたつもりです。これからもそうありたいと願っています。でも、四十路を祝い一杯飲んだ席で彼に言われました。「先生はいい人と思われたくて仕事をしているのですか!『頑固さ』は捨てるのですか!!」と。“目から鱗”、そんな一瞬でした。


うっかりミス 2010年2月15日

Q:私は人事の仕事と研修の仕事を兼務しています。研修の仕事量は2割程度です。兼務が言い訳にはなりませんが、先日、研修関係で“うっかりミス”をしてしまいました。大事には至りませんでしたが反省しています。先生には私のようなことがありませんか?

A:大事に至らないで良かったですね。私も人間ですから無いといったら嘘になります。でも、10年前でしたら「ほとんど無い」と断言できた?かも知れません。頭の中のコンピューターが驚くほど回転していました。今は全くダメです。記憶力が著しく低下しています。ですから、@メールのやりとりは全てプリントアウトする(画面で見ているだけではミスにつながります) Aやるべき仕事は必ずポストイットカードに書いて貼り付ける(私が留守の時には事務方に貼り付けさせる) それでもうっかりミスをすることがありますから、Bポストイットカードに書いたことが予定通り終わっているか否かを必ず事務方に確認させる(忘れている場合は催促させる) ことを徹底しています。忙しいときは週末しか戻れません。戻って膨大なカードを見ただけでウンザリしますが、そんなことを言っている暇はありません。優先順位を決めてカードを少なくしていくだけです。今日もこの配信がこの時間(20時)になってしまいました。「一日は24時間ある」、と豪語していた橋も最近では徹夜が敵いません。いつも“うっかりミス”をしていないかと不安になります。


『伝える』ということ 2010年2月1日

 1月の3連休前後から鈍痛に悩まされ続けました。頭が痛くなることなど滅多にありませんので心配になり内科と整形外科を受診。原因は「ストレスからくる緊張性の肩こり」とのこと、唖然としました。(いまはとても楽になりました)
 年末・年始を返上して依頼された教材の原稿を書いています。本のタイトルは『わかりやすい説明の技術』。ビジネス本でしたら、もう3冊程度は執筆を終えています。B5版220ページ強の教材ですから、そのボリュームは大変なものです。この本を読んで読者がわかりにくかったら洒落にもなりません。元来、私が得意とする分野は実技の指導です。“短時間でいかに技術を習得できるか”、それが私に与えられた命題です。手前味噌ですが、「私が開発した指導プログラム」が相当数あります。実技指導は、傍からみると簡単にやっているように見えますが決してそうではありません。進行手順に微妙な隠し味を入れてあるのです。私をサポートしてくれるベテランの講師でも、完全にマスターするまでに、かなり時間を要します。手順をほんのわずかでも違えたり、言葉が言い足りなかったりすると参加者に混乱を与えてしまいます。現場ではいまでも苦労が絶えません。教材には実技指導をふんだんに盛り込む予定です。現場でしたら、数分で説明できることなのに、活字で伝えるとなると至難の業。悪戦苦闘の日々を送っています。『読んでわかる、そして、できるようになる』。そこを伝えなければならないのです。ストレスはピークに達しています。

 先週土曜の夜、NHKで『言語力』に関する番組を放送していました。それを見て元気と勇気が出てきました。いま書いている原稿はズレていない。大切なことを書いているのだ。へこたれてはいられない。そう思っています。

 読者の皆さんは、今月のアドバイスは何?そんな疑問が湧いてきたのではないでしょうか。「あなたは研修担当者として何を伝えようとしているのですか」「あなたの気持ちを本気で(上司に、参加者に、講師に)伝えていますか」「研修の尊さをあなたの言葉で伝えていますか」。『伝える』ということをこの機会にいま一度考えていただければ幸いです。


大幅に予算減 2010年1月15日

Q:予想はしていましたが、研修予算が大幅にカットになりました。これまでの研修の見直しを迫られています。研修の継続・廃止で悩んでいます。何を基準に決断したらよいのでしょうか?

A:こんな時代だからこそ、人材育成がいっそう必要だと思うのですが、現実は厳しいようですね。研修目的には、@即戦力を養うもの(実務研修、リーダー養成研修、プレゼン研修など) A中長期的に繰り返して学習することで能力が開花するもの(文章作成研修、企画力開発研修、政策形成研修、目標による管理研修など) Bその研修を怠ると問題が大きくなるもの(接遇研修、クレーム対応研修、人事考課者研修など) などのパターンがあると考えます。かなり抽象的な説明ですが、まずは、自分の組織に必要なのは特にどのパターンなのかを見極めることだと思います。研修を提供する立場から、少し視点を転じてみましょう。“あなたが経営者だったら”の視点に立ってください。その視点に立たない限り答えは見つからないような気がします。研修費を自分のお金だと思うことです。ひょっとしらた4月は異動があるかも知れません。自分の勝手にお金を使う・・・いい気分になれるような気がします。
 

仕組み(仕掛け)をつくる 2010年1月1日

 明けましておめでとうございます。よい1年となりますようお祈りいたします。本年も、よろしくお願いいたします。

 昨年、T自治体の「接遇&クレーム対応研修」を担当させていただきました。3時間の研修を午前、午後と繰り返して行なう研修です。実施回数は延べ10回。本来でしたら2日間かける内容の研修を、半日に凝縮して行なうわけですから、正直いって精根尽き果てました。それでも、すべて終了したとき、とても爽快感が残りました。参加者は、一般職から部長級まで。このような形態は、他に例を見ません。この自治体には、(管理職が中心となって組織した)住民サービスの向上を目指した委員会があります。各回の司会は、委員会の皆さんが交代で務めました。委員会の責任者は住民サービス部長のKさん。とても聡明で熱意ある女性部長です。Kさんから直々に依頼されたのですから、橋はこの上ない幸せ者です。反省と悔いも多々ありましたが、仕組みづくりの大切さを、さらに痛感しました。懸(賢)命な皆さんの活躍を祈ります。
 一方、F自治体の仕掛けづくりにも目をみはるものがあります。2日間の接遇研修を1日コースで2回実施。2回目の研修に参加する数日前までに、1回目の研修を終了してから職場で実施したこと(報告会・研修会・OJTなど)、自分がどう変化したか、今後の課題は何か、などを細部にわたってレポートさせるのです。一部の参加者からは「負担が大きい・・・」との不満があるかも知れません。それでも、研修担当者の皆さんは動じません。それがあたり前だと思うのですが、このあたり前をあたり前に行うことが、とても難しいのではないでしょうか。研修を通して、私も勇気をいただきました。

 『老いて熟す』、かくありたいと思う元旦です。ご支援ください。
 

戻る